***





ドガッ!


大きな音がして壁が揺れたような気がした。

壁に背中を思いっきり当てたのは頬を怪我した湊だった。


湊の前に人影。胸倉を思いっきり掴んだのは和だ。



「ここまで来るのに、どれだけ時間がかかったと思ってる?」

「っっ、」

「あいつが居なくなって、ようやく僕達がこの地位まで来た。お嬢の隣に来れたんだ。それをお前は──」



俯いたままの湊は唇を噛んでいた。
和は顔を歪め、手を離した。



「早くお嬢の所に…」



「不要な事だ」



和と湊は同時に横を向く。
気配を感じなかった留華の方を…。


廊下の壁にもたれかかり、腕を組む留華が不敵に笑っている。



「…お嬢は」



「洗面所。泣いたから顔を洗いたいんだと」



簡単に居場所を言った留華に驚きながらも、和と湊は花の所に向かおうとした。


洗面所は留華の脇を通るしか道はない。
和に続き湊が後を追う───。




「自爆してくれて礼を言うよ。
お陰で簡単に手に入った」




和がすれ違う瞬間…留華が小さく、笑いながらそう言ったのだ。






***