…そんな事今はどうでもいい。
「離して!!」
「はぁ…暴れると怪我が長引きますよ。面倒くさい」
じゃあ離してくれたらいいのに!
「和!湊!助けて!」
…………っ、なんで。
「彼女の鞄を返していただけますか」
なんで黙ったままなの?
「や…やまと!みなと…!」
「部屋に戻りましょう。本日からは私がいますので、五十嵐花さんは自室へ行きましょう」
「いやっ!!」
溜息ばかりの男の人は、何度も面倒だと言っている。
「ああそれと、一つ御忠告を」
和と湊の横を通り過ぎた後で立ち止まり、言い忘れていたかのように話し始めた。
「金輪際、彼女に一切近付かないようお願いします。近づけば…容赦なく排除致します」
……なに、言って!!
「「分かった」」
一切笑わず、こっちを見たまま躊躇う事もせず言い放つ。
「和?湊?…なんで?」
二人の答えを聞いた彼は歩き出した。
「降ろして!」
「動けば悪化すると言ったはずです」
………っっ、
「私…離れたくないって、言ったのに…!なんでっ…!」
嫌だよ。離れたくないよ。
もっと一緒にいられるって思ってた。和と湊もそう言ってくれたから。
「っっ…和、湊」
好きな人と離れる事がこんなに痛いなんて、知らなかった。


