ビクリと驚いたのは湊と私。
冷たく鋭い視線が刺さる。



「離せ。今すぐに」



…この重圧は、本当に留華なのだろうか。

今まで感じた事の無い、重い空気と殺気。



威圧に負けたのだろうか、湊の力が弱くなったような気がした。


留華はそれを確認した後で、私に手を伸ばす。




「お嬢」




笑いかける仕草。
優しい口調、言葉遣い。


さっきまで、飛び込みたかった胸の中…だけど。



「…っっ、」



───今は違う。


振り返った私は湊の指を掴む。
ドクドクと流れる血に胸が痛んだ。




…なに、したの私。



「み…なと。私、」




…苦い。

どうしてこんな事、したんだろう。



血で濡れた手がスルリと抜けた。

滑ってしまったわけじゃない。
無理矢理、後ろから引っ張られたから。