震えた小さな声。
私だけが聞こえるようなそんな声。
「……俺は、お嬢が、」
───コツン、
ノック音が一度だけした。
私の視線は、背後の戸に向く。
「お嬢?凄い音してたけど…大丈夫?」
留華の声だった。
…る、か。
湊の胸板を押して、ほんの少しの隙間から抜け出した。
バランスを崩しながらも戸の方へ向かう───、
「…っ!!」
引き留められた。
湊が私を引っ張ったのだ。
背後から抱きかかえられる。
地面に着かない足を必死でバタつかせた。
手を伸ばす先は留華がいる方向。
「る、留華…!」
「…黙れ」
昨日と同じように…。
「んぐっ!」
湊の指が口の中に入ってきたんだ。