何を言いたいのか、分かったのだろうか。笑う声が聞こえてきた。


「せやなぁ」


背中から伸びて来た手は私の顔を横に向けた。春比古くんの顔が近くにある。


「花が可愛くて見てまうんやろな」


サラッ、オールバックにしてた髪。ワックスが取れたんだ、サイドの方から髪の束が落ちてきた。

思わず伸びた手。髪に触れ、春比古くんの耳に掛けると、その手を握られる。春比古くんの手は暖かかった。


お互いの顔を見つめていたのはどれぐらいだっただろう。五秒…三秒だったかもしれない。瞬きをした後で、顔がゆっくり近付いてくる。

火傷痕の無い顔。手術痕すら見えないのだから、余程腕のいいお医者さんだったのかもしれない。


やっぱりカッコいいなぁ。痕があった時からかっこよかったもんね。それに兄妹だからやっぱり似て………ん?



「…花、」

「詩歌ちゃんは!?」



顎に手が乗っていた、そんな瞬間。私は盛大に叫んだ。耳がキーンってなりそうな位置で言ったからなのか、春比古くんはしばし停止していた。


もしかしてまた迷子になってるんじゃ…!!


勢いよく立ち上がった。でも忘れてた…今は春比古くんの体に収まっていた事を。思いっきり、それはもう躊躇なく…春比古くんの顎に私の頭がぶつかった。


「「ッッ──────…!」」


春比古くんは顎を覆い、私は頭のてっぺんを抑え、二人同時に悶絶。


「…落ち着け、花。詩歌は今家や…お泊り会や」


と、春比古くんが言った。