………っ、!
「…こういう事。分かる?」
それって…和と湊も違反したってことになるの…?
”親父との約束を破った。”
そう言った湊の意味はもしかして、これの事だったの?
「俺はそれを破り、罰則を受けた。中国のマフィアとして、頂点を取るまで二度と帰って来れない。そんな罰を受けたんだよ。だから…俺はお嬢の前から姿を消した」
目を見開いた。全く知らなかったから。
「でもお陰で俺は…五十嵐組として傍に居るんじゃない。マフィアのボスとしてお嬢の隣にいれる。念書なんて気にせず、俺はお嬢と一緒に……、」
赤らめた顔をした留華が、私の唇にまた近付く。
──────それを顔を逸らし拒んだ。
………嫌。
ずっと…留華が良いと思っていたはずなのに。どうして嫌だと思ってしまうんだろう。
「…………は?」
乱暴に掴まれた頬は私を正面に向かせた。
「冗談だろ…お嬢。俺はお嬢の”王子”とやらなんだろ?なんで俺を拒んでる?」
痛っ…!
「だから…だから言ったんだ。後釜があいつ等じゃ駄目だって。俺はずっと親父に言ってたのに。無視して番犬なんかにしやがった。あいつ等は絶対、お嬢を喰うつもりだってあれほど言ってたのに…。
俺のお嬢に手を出した挙句…こんな、」
ドスの効いた低い声。
身震いする私を見て、留華は突然声色を変えた。


