天然お嬢と双子の番犬さん



昨日と同じように。
湊の指が口の中に入ってきたんだ。

脱げかけの浴衣。
左肩に湊の息がかかる。


昨日の留華と同じ、指の本数と感触。
していることは全て同じ。なにもかも。

それなのに────────、


「…あの猫が仲で暴れてた、か?」



待って。待って留華…、


行かないで。



ガリッ…!

口の中で鉄の味がした。


思いっきり噛んだ。
唾液と混ざる血の味。


「ッ…、!!」


痛みを堪えるように歯を食いしばっていた湊の声が漏れる。


………嘘。
私、何やって…。


自分でも痛いぐらいに強く噛んでしまった。湊が堪えるような声を出すなんて、よっぽど痛かったんだと思う。

私が悪い。
それなのに…、


「……っ、悪い…お嬢」


どうして、湊が謝るの…?