震えた小さな声。私だけが聞こえるようなそんな声。
「黙ってたのは…本当だ。嘘じゃない」
「……っ、なんで、」
「嫌われたくなかった…お嬢と…離れたくなかった」
………っ、そんなの後からならいくらでも。
「本音だ。嘘じゃない。俺は…俺等はお嬢の隣にいたかった。言えば……お嬢が俺等から距離を取ると思った。そんなん耐えられねぇんだよ。俺等は、」
今にも泣いてしまいそうな湊の瞳。
……ああ、これはきっと本当だ。
嘘じゃない…、
────────コツン、
ノック音が一度だけした。
私の視線は、背後の戸に向く。
「お嬢、凄い音してたけど…大丈夫?」
………留華。
”だって留華は王子様みたいにかっこいいんだもん。”
湊の胸板を押して、ほんの少しの隙間から抜け出した。バランスを崩しながらも戸の方へ向かう────────、
「…っ!!」
引き留められた。
湊が私を引っ張ったのだ。
背後から抱きかかえられる。
地面に着かない足を必死でバタつかせた。
手を伸ばす先は留華がいる方向。
「る、留華…!」
「…黙れ」
「んぐっ!」


