天然お嬢と双子の番犬さん



………っ、


「嘘だよね?だって…あんな人みたいな事…和と湊がするわけないよ、ね?」


怖かった。
襲われそうになった時。

身動きが取れなくて、何も出来なくて…私の事を無視して、服を破かれて触られて…気持ち悪くて仕方なかった。

そんな事を和と湊が……、


────────どうして、否定してくれないの?


「っ……!」


湊に向かって枕を投げつけた。


「どうして黙ってたの?…バレなきゃいいって思ってたの?あんな……、」


あんな事をしておいて?


「お嬢…それは、」

「私の気持ちは考えてくれなかったの…?」


どれだけ怖かったのか。
和と湊に分かるの?


「離して!もう出て行ってよ!」

「っ、お嬢…!」


私が気が付かなかったらずっと黙ってるつもりだったのかな。

抵抗した私の手が、


バチンッ!


湊の頬を打った。

赤く染まった頬が痛々しくて、私はやっと湊の顔色を見た気がする。



……なんで。

…………なんで、そんなに辛い顔してるの?



ズキンズキンと音を立てる胸。
手の平はそれよりももっと痛い。


涙が落ちたと同時に、抱き寄せられた。一度だけ拒絶したがそれより強い力が私を包む。



「……悪い、」



背中に回された手が震えている。
震える声も身体。


…っ、私、



「お嬢…悪い。悪かった。傷付けて…、気が済むまで殴っても、刺してもいい。だけど…頼む。俺等から、俺から離れて行かないでくれ」




……どうしてちゃんと話を聞こうとしなかったんだろう。