子供の頃、見た童話。留華が読んでくれたあの絵本の中。王子様がくちづけするシーンがあった。お姫様はそれで目覚めて、王子様と結ばれる。
「きっと王子様は留華だね!」
「お嬢…俺が王子でいいの?」
「うんっ。だって留華は王子様みたいにかっこいいんだもん」
そう言った私の頭を撫でてくれた留華。
本当に思っていた。
王子様が留華だって。
そしていつか──────、
憧れは一瞬の内に、バラバラに崩れて落ちた。
「何の…、」
「あの日和と……何をしたの」
湊の表情が強張った。
嘘…きっと嘘だよ。
まさかあんな人みたいなことを、和と湊がするわけない。私の意思とは関係なしに、事を進めようとしていたヤコポって人みたいな事なんて……するわけない。
「なにも…してないよね…?」
だって和と湊がそんな事するわけない。
「湊…なんか言ってよ」
夢か何かなんだ。
あの薬はきっと幻覚を見せるような物で…、
だからあんな変な夢を見ただけ。
「…………………お嬢に、触れた」


