「………へ…?」


今のって…、え?


──────唇だった。
私の唇と、湊の唇が重なってた。


何処かで感じた事がある、煙草の味と匂い。

初めてのはずなのに。
どうしてこんな事思うんだろう?


ハッとしたのは湊の方だった。口元を抑え、目を泳がせる。


「お嬢…これは、」


私と目を合わせず、焦ったように言葉を零す。
しかし言い訳も何も出てこない様子だ。


……っ、何処かで。


留華は煙草を吸わなかったし、和も煙草を吸わない…。


”お嬢!もういい…何も心配しなくていい”



………………あっ、



助けてくれたあの日の事。
和と湊なら来てくれるって信じていた日の事。

和と湊からされたあの日の、うろ覚えのキス。


そして、


触れられた身体。


湊の手が私に触れる前に、払いのけた。大きな音が鳴る。



「……なんで…あんな事したの…?」



何もなかったって、言ったのに。