留華が帰って来てから、ずっとそればかりだ。
きっと三人の中で何かがあったのだろう。

私には分からない何かが。


「湊に触りたい」

「…っっ、」


押し付けられていた手が振り解かれた。

手探りで湊の顔を探す。その手を誘導してくれたのは湊の手。


湊、手は暖かいのに。
ほっぺはちょっと冷たい。


「私…湊と和に甘えすぎてるかな?」

「……全然。寧ろ足りねぇ」

「和と湊に愛想つかされないか心配してるの、私、迷惑ばかりかけてるから」

「馬鹿か…そんなんなるわけねぇだろ」


だって留華は私を置いて行ったから。
和と湊もそうなるんじゃないかって…不安なんだよ?



「湊の顔、見たい」



チカチカと眩しい光で目を細める。

解かれていたネクタイから、チラ見する胸元。長いまつ毛の奥にある黒い大きな瞳。瞳の奥に映る自分の姿に目を覆いたくなった。


だって凄くかっこいい。

こんなに近いのに。
何処から見ても綺麗だなんて。



「留華と比べたことなんて無いよ。
それに私は、和と湊が良いから一緒にいるの。だから二人から離れたりしないよ。

だって、私は和と湊の事大好だから」



きっと湊は何か不安な事があるんだ。

私と同じで離れて行かないかって不安なのかもしれない。だから解してあげたかったし、私の本心を聞いてほしかった。




「──────っ、?」




状況を理解するのに、数秒掛かった。それぐらい突然の出来事で頭が追い付いていなかった。


だから、
煙草の味がこんなにしてるのに、


唇が重なり合っている事に気付くまで時間が掛ったんだと思う。