「……なんで、お嬢は」


頭を掻く音がした。


「簡単にそんな事されてんだよ」


低い声だ。
見えてないけど分かる。

凄く怒ってる。


「…キス、されてねぇだろうな」


”今日からよろしく、花”
甘い、小さな、リップ音。

”俺も花がよう見えて嬉しいわ”
右手にチュッと高い音。


「……あっ、」


…された。二人に。


大きな舌打ちされて、乱暴に浮いた身体。
押し付けられたのは多分ベッドだ。


「何処にされた」


抑えられる両手首は頭の上の枕に。掴まれている手首が痛い。


「っ…左の頬と…右、手の平…だよ」

「そんだけされて、嫌がらなかったのか?」

「えっと…」


突然だったから。でもそれ以上に…、


「パパと留華もしてたから、挨拶なのかなって、思ってて…」


昔から良くされてたから。
そうなんだと思ってた。

だからそんなに深く考えたことなんて…、



「不知火の名前を出すな」



…っ、みなと?