──────湊の匂いだ。
「っ…どこに、行ってたの…?」
怖かった。
湊が来てくれなかったら…私…。
「お嬢、これで良く分かっただろ」
頭を撫でてくれる湊の優しくて大好きな手。
「俺と和が居ないとこんな目に合う」
「……うんっ。ごめんなさい…」
今でも触れられた所がゾワゾワしてる。
やっぱり私は…和と湊が居ないと駄目なんだ。
「何処触られたか教えろ」
何処……、
「右の…足触られた…」
「誰に?」
誰?…そんなの分かんないよ。
また足首に触れる手に身体が大きく揺れた。
湊は私の耳元で、湊の手だと言ってくれた。
「ここから?どこまでだ?」
「…ふ、くらはぎ…から、」
「から?…どこだって?」
っ……、
「湊、これ…外して」
変な感じがする。触れる手も近い声も…全部おかしい。
「みな……ひゃっ!」
太ももへ移動した手がさっきと同じように内ももを擦った。
「ここもだろ」
なんで…知って…。
「み、みなと…怖い…」
「俺が怖い?」
「湊は怖くないよ!…っ、見えないのが怖いの、」
湊の匂いがする。
湊の声がする。
だから、湊なんだ。
……でも見えていないから。本当は少し、ほんの少しだけ疑っている自分も居る。


