「み、みなと…?」


真っ暗。何も見えない。
足は動く。だけど自由じゃない。


「ね、ねぇ…何処にいるの?」


気配を全く感じない。もしかして誰も居ないんじゃないかって…。


「み…湊?どこ?」


部屋の中に…いるんだよね?

明かりもなく声もしない。真っ暗な空間に取り残されたようだ。


「イタッ…!」


ガンッと大きく当たったのはリンの爪とぎだった。大きく転んだが、軽く済んだのは畳だからだと思う。

痛みを堪えつつ、自力で体を起こした。地べたに座り、キョロキョロする。


うそ…まさか本当にいなくなっちゃったの?


「み、みなと…っ!?」


突然誰かが私の足に触れた。


「…っ、湊?…だよね?」


返事はない。だけど手が触れていると言い切れる。足首から徐々に上がって来る。

ふくらはぎを触る手の平が、膝をなぞり始める。


っっ…もしかして、湊じゃないの……?


「い…いやっ…!」


確かに蹴飛ばしたはずなのに、ビクともしない。
手は私の太ももに触れ、内ももを擦り始める。


──────い、いや。


「い、やぁ!湊!助けて…!みなと…!」


逃げたいのに、逃げられない。

ヤコポに触れられそうになった時の事が脳裏に浮かぶ。あの時は縛られてなんて無かったから、簡単に逃げられたんだ。だけど今は違う。


「っ、い、いや…湊!…湊っ!」


こんなの嫌だよ。