リンはまだ帰って来てないみたいだ。
…何も問題が起きなきゃいいんだけど。


「湊はどれぐらい、一緒に…」


ピシャリ、と勢いよく閉じた襖。


入ったと同時に襖が思いっきり閉じた。

外ではリンの声がした。どうやら私達の後を付いてきていたらしく、閉め出されるような形になってしまったらしい。ガリガリしながら大きな声で鳴いていた。

本当は今すぐ開けたかったけれど、出来なかった。



「み…なと?」



響いた大きな音は、私を大きく震わせた。

…なに?様子が、


「きゃっ!!」


ドンッ、と壁に押し付けられ、昨夜の痛みが走る。


「俺が”兄貴”だと?」


低い声。
これはさっき丞くんが言った事について。

怒ってる…?


「…ずっと一緒だったから、そうみたいだなぁって思って…」


優しくて頼りになるお兄ちゃんみたいだなって思ったから。留華にも同じように思っていたこともある…ううん、今もそう思っているのかも。


「…ざけんな。俺はお嬢の兄貴になったつもりはねぇ」

「それは…そうだけど…」


ちょっとグサリ。

それは「何とも思ってない。」そう言う事なのかと思ったから。