天然お嬢と双子の番犬さん



翌朝。いつも通りよりちょっぴり遅く起きた残り少ない連休日。


「集会?」


朝ご飯を食べる私は浴衣。その向かいに座るパパは仕事着のスーツ。真っ黒な物じゃなく、お洒落な紺色チェックな物だった。だし巻き卵を箸で半分にするパパが頷いた。


「今日から一週間、世界中の五十嵐組傘下共の出入りが激しくなる…のと同時に!

花の大好きなパパとの時間が取れなくなりますっ!少しばかり!辛抱を!大好きなパパと会う時間が減るのは辛いと思うけど!!あっという間だから!我慢しようね!!ねっ!…ああああ!!花と会えなくなるぅ!」


「留華、久々の日本食美味しい?」


「美味しいよ。でもお嬢と一緒なら何でも美味しく感じる」


「キザな事言ってんじゃねぇよ。さっさと食え」


「不知火さんのとこの若がもう着いたって連絡来たんでしょ?さっさと行ったら?」


「はなぁあ!?パパの話聞いてたぁ!?」



ほうれん草のおひたしを咀嚼しつつ、パパに向かってにっこり。

”勿論聞いてたよ?”そんな意味合いで。


「あああ!花ぁ!やっぱ悲しいよなぁ!?パパと居れなくて寂しいよなぁあ!パパも悲しいいいい!寂しいよぉお!うわああああ!!」


全然伝わってなかったし、そんな意味で笑ったわけじゃなかったけどなぁ。

ゴホン、と咳をしたパパが私にきんぴらごぼうの入った小鉢をくれた。


やった!
物足りなかったから嬉しい!


手を伸ばす。
小鉢を貰う前にパパが口を開いた。


「花、男は獲物を狙う狼だ。何かを手に入れる為なら何でもする…決して隙を見せるなよ。一瞬で喰われるぞ」


…おおかみ。


「パパもそうなの?」

「パパは可愛いネコ科です!」


リンと同じって事?


「和、湊。お前等二人は交代で花を守れ」

「「了解」」

「俺がお嬢を守るよ?」

「お前はイーランのボスとして出なきゃ駄目だろうが」


パパがそう言うと、隣の留華から舌打ちが聞こえた。