右耳に残る低い声。
声がかなり近い。
「お嬢は何もしてないんだ。間違った事は何もしてない…間違ってるのはお嬢じゃない」
あ…手が。
握られていたはずの感触が無くなる。
「もう夜も遅い。部屋まで送るよ」
「待って!留華!」
出て行く間際、覆っていた留華の手が無くなり顔がはっきりと見えた。今にも泣きだしてしまいそうな哀愁帯びた面持ちの二人を。
「…留華!降ろして!」
みんなの居る大広間を通り過ぎた。
どんどん和と湊からも遠くなっていく。
「っ…留華!」
「降ろしたら行くだろう?あいつ等の所に。だから降ろさない」
ビクッ、
ほんの一瞬、私を見た。
苛立ちなのか焦慮なのかは分からない。
ただ初めてだった。私が留華に対して”怖い”と思うのは。


