差し出された手にライターを置いたと同時に、鉄をこじ開けるような音が響く。音がしたのは人が出入りしていた扉の所──────。
今度はよーく知ってる二人組だ。二人に声を掛ける前に、腕を引っ張られ、煙草臭い男の人の方へ。
「来やがったな!東雲!」
灰色のサラサラ髪の男と煙草を咥えている黒髪の男。二人共同じ”東雲”である。
二人の視線は私の方へ向く。
とりあえず手を振ってみた。
黒髪は溜息、灰色髪は苦笑い。
「おい!分かってんのか!こっちには人質がいるんだ!」
目の前に出されたのは果物ナイフ。
鋭く光る銀色の刃に私の顔が見える。
あと少しで当たりそう。
「いくら若頭二人だとしてもなぁ!大事な大事なお嬢様がいたら……、」
足早いなぁ。二人共。
前世はコンパスか何かだったのかな?その距離、たった3歩では来れないよ?
目の前のナイフと、その男が吹っ飛んだ。飛んだ先には大きな木の箱で。間違いなく怪我したであろう音と共に、突っ込んでいった。
縄が切られ自由になる。
「お嬢、怪我してない?大丈夫?」
「めんどくせぇ仕事増やすんじゃねーよ」
確認の為か全身出てる肌の部分をよーく観察された。周りの人達は吹っ飛んだ人を見て怯むので精一杯。後退りで精一杯の様子。
膝を見た灰色髪の動きが止まる。
釣られて黒髪も止まった。


