「お嬢は僕達に傍に居て欲しいんだよね?」


和は確認事項の如くそう言った。
私はこくんと一度だけ頷く。


「じゃあ、僕達から離れないでくれる?」

「うん。和と湊から離れない…から、」


だから一緒にいるのは辞めよう、とかもう言わないよね?


「ああ、お嬢が離れないならな」

「わ、分かった!和と湊から離れないようにする!だから…」

「分かってる。ずっと一緒にいるって約束する。あと前に言った事覚えてる?」


お風呂の時の話かな?かっこいいとか駄目だって言ってた時の。


「五十嵐組以外の男と話したら駄目だからね?いい?」

「でも、昨日…、」


話しちゃった。
ヤコポって人と。


「俺等が遅れたのが悪かっただけだ。気にしなくていい」


ホッとした。怒られると思ったから。


和が私を抱え上げた。
足についた砂がパラパラと落ちる。

湊は足の裏の砂を払ってくれた。


天気良くて良かった。雨降りの後だったりしたら今頃泥でドロドロだったね。


「湊、ありが…?」


捲れて見えた膝より少し上。太ももまではいかないけど、そこに赤い点があった。前に首筋に出来た赤い点のような物だ。

外に出たから刺されたのかな?
ふくらはぎにも少しついてるっぽいし。


「お嬢?」

「え?あっ、ありがとう!」


虫刺されの薬、昨日貰えば良かったかな…最近よく刺されてるから。

廊下で降ろされた。そこではリンが待っていて、私が来た途端足に頭を擦り付けてきた。相変わらず和と湊には近づかないけど。


「あれ?和と湊は?」


一緒に戻ると思ったのに。


「ここのサンダルじゃないんだ。向こうの廊下から戻るよ」

「先に行ってろ」


二人の手が私の頬を包み撫でる。唇を綻ばせた和と湊に、私も釣られるように微笑んだ。


「親父の所に行く時は玄関、通らないでね」

「どうして?」


和は「客が来るから」とだけ言うとまた微笑んだ。