連休初日。当たり前だけど、かなり人が多い。



「「お嬢」」



差し出された手を握る。



「手離さないでね」

「手離すなよ」



この身長差で真ん中に私が居ると、本当の兄妹みたいだよね。嬉しいなぁ。



遠くで声がする。
それと漂う甘いいい匂い。


───これは!



「クレープだぁ!」



移動販売のクレープ屋さんだった。


最近クレープ食べて無かったなぁ。
久々に食べたいなぁ…。



「駄目だよ」

「駄目だ」



まだ何も言ってないけど!?

見てた先がクレープ屋さんだったからだろう、言いたい事が気付かれてしまった。



「親父の言ってた事忘れたの?」


「そこだけって言ってただろ」


「でも!車だよ!お店じゃないし!」



二人の手を引っ張った。勿論ズルズル引かれて行くわけだけど。



「…ッ、ケチんぼ!」



いいじゃん!少しの寄り道ぐらい!



「…可愛い顔しても駄目なものは駄目」

「…可愛い事言うんじゃねぇ。駄目だ」



一瞬揺らぐような間があった。それでも二人は首を縦に振る事は無かった。