天然お嬢と双子の番犬さん



さらり。
春風が頬を掠め、髪が靡く。

この頃の髪は長かったかな。
風が吹く度に大きく揺れるから。

中学生になったばかりの私は、新品のセーラー服の袖で涙を拭っていた。これじゃあ入学前に汚れてしまう。

でも仕方がないよ。だって勝手に涙が出て来るから。どうしようもないの。



「お嬢、泣かないで」



茶髪の彼はそう言って頭を撫でてくれた。

だって私を置いて行っちゃうんでしょ?


「大丈夫。すぐ戻ってくるから」

「ぐすっ…、いつなの?」

「うーん、三年ぐらい?」

「長いよ…行かないで…」


今制服を着てるのは、あなたが見たいって言ったから。いなくなると知らされたのはその後だった。

もう行っちゃうんだって。
私を置いて一人で。

ずっと一緒に居てくれるって言ったのに。悲しくて、心が痛くて、辛い。大好きな人と離れ離れになってしまう。

玄関にリムジンが止まってる。彼を待っていて、私がこの手を離してしまったら行ってしまうんだね。

彼はかしずいて、手の甲にキスを落とした。
王子様のように優雅に行われたそれに、私の涙は引っ込んだ。


「ごめんね。でも必ず戻ってくるよ。そしたら──────、」


大きな風が吹く。
小さく、私に向けて言った台詞。


「…待っててくれる?」


頷いて、ゆっくり手を離した。