天然お嬢と双子の番犬さん




場面が変わった。


薄暗い部屋で光る煙草の火。
銘柄はアメリカンスピリット。

喫煙時間が長い事で有名な通称、アメスピ。


煙草を咥えているのは茶髪の男。


その前には顔に麻袋を被せられた太った男と他数名。イタリア系マフィア、ルーフスファミリーである。

おもむろに麻袋取り上げた。



「おはよう。起きたかな?」

『…ッ?!ここはどこだよ!』

「ああ…イタリア人だったっけ。ちょっと待ってな」



男は悩むポーズをした後、煙草を吸って吐いた。煙が漂い充満する。


『話を続けようか』


瞬時に日本語からイタリア語に変わった。



『ここはどこだ!?』


『そう騒ぐなよ。騒がれるのは好きじゃない。落ち着いて話をしよう』


『落ち着けるわけない!!』



後ろ手に縛り上げられている状態だった。ちょっとやそっとでは解けないほど厳重に結ばれている。

太った男、もといヤコポは話を聞かず叫び散らしていた。


その間に茶髪の男は椅子に座った。煙を吐く仕草も吸う動作も全て紳士的に見えてしまう。



『っ!おい!聞いてるのか!』



全く聞いてなかっただろう男は笑って口を開く。


『失礼。なにぶん久々のイタリア語でね。正直お前が何を言っているのか全く分かってない…いや、聞く必要が無いから聞いていなかった』

『な、なに!?』

『一度だ。一度しか言わないからよく聞け』


足を組み、煙草を指に挟む。



『ここは中国。そして俺はチャイナマフィア、イーランのボスだ』



ヤコポは驚き、口を閉ざした。

イーランは中国本土のマフィア名。チャイナマフィアの中心的存在とも言われてた。そのボスを前に絶句してしまったのだ。