天然お嬢と双子の番犬さん



***



『おま、え等…どっから…ぐぇ!』

「糞豚風情が僕を指差すな」



和がヤコポを踏み潰す。
今までの優しい面影とは違っていた。

笑うことなく、何度も踏んでいた。

その表情は、怒りや憎しみ等様々な黒い物が入り混じっている。


湊が花を抱え、部屋から出てきた。
それに気付いた和が動きを止め駆け寄る。


「おじょ、」

「っ!?イヤ!」


手を伸ばした和の手を払う。
恐怖に怯えた顔だった。

和は髪をぐしゃっとしてから、いつものように微笑んで花の頬を撫でた。



「もう怖くないよ。僕達が来たから」



優しい、いつもの和に戻った。


「……やま、と…?」

「うん。そうだよ」


花が手を伸ばし抱き着いた。
安心したのかそのまま動かない。


両手が空いた湊がヤコポを殴った。見れば見るほど痛々しい顔になった。


「若頭!」


巨漢の男、五十嵐組の男が二人に駆け寄ってきた。
震える花に気付いた男は声のボリュームを下げた。


「全員仕留めました…ただすみません。少しやり過ぎました。何本か骨やっちゃってます」

「…殺さなかっただけいい」

「すみません。お嬢に酷い目を見せたと思ったら…全員止まれませんでした」


男は殺気で溢れていた。

ただの下っ端、しかし全国トップ五十嵐組所属。若頭や組長には負けてしまうが、その殺気はそこらの組の物と同じわけではなく、武器を持っていたマフィアに対し素手で全員無傷の実力。


「親父に連絡」

「済んでます。こいつ等どうしますか」

「逃げねぇように片足折れ」

「大丈夫です。全員残らず片足と利き手折りやした」


湊は唇を緩めた。「お嬢の事になると言うまでもねぇ」と呟きながら。