話し声が近くなった気がする。
かすむ視界の中で、手が伸びてくるのが分かった。
「っ、やめて!触らないで!」
ランプを振り回した。
少しだけ当たった気がした。
でも、取られた。
だから今度は両手で押し返しながら拒絶した。
嫌だ、嫌だよ。
触らないで。
両手首を掴まれた。
引っ張るけど振り解けない。
「っっ…、和!湊!」
助けて──────、
「お嬢!」
ビクッとして、唇に何か触れた。
煙草の香りと苦い味。
キスはレモンの味なんて、誰が言ったんだろう。
「……み、なと…」
「お嬢!もういい…何も心配しなくていい」
抱き寄せられて、湊の匂いがした。いつも湊が吸っている煙草の香りと…湊の、匂い。
「……あい…たかった…」
絶対に来てくれるって信じてた。
いつも助けてくれるのは何時だって、
和と湊だもん。
しがみつくように抱き着いて、シワが付くぐらい服を握った。


