重厚な扉の前には腰に刀を携えた二人の騎士が立っていた。愛来は騎士に王様との謁見を申し込もうとしたその時、重厚な扉が少しだけ開き中の声が響いてきた。
「トレント待たれよ!!」
「王よもう待つことなどできない。期日は今日より五日です」
謁見の間から出てきたのはひょろりと背が高い黒髪の男性。眼鏡が印象的なその男性は愛来の顔を見て目を見開いた。
えっ……何?
「愛来様ですね。こちらには何をしに?」
「あの……。ウィルの様子が……その、王様と話があって」
トレントは愛来の腰に手を軽く添えると謁見の間の扉を再び開けた。中にいた王ガルドはトレントが戻ってきたことに安堵の表情を見せたが、隣にいる愛来に気が付くと蒼白した。
「愛来殿どうしてここへ?」
「急に申し訳ございません。あの……」
愛来は隣に立っている男性に目を向ける。
この人が隣にいると話にくいわ。どうして一緒にきてしまったのかしら。だいたい最近のウィルの様子をこの人がいるのに話してもいいものなのか……。
考えあぐねいていると隣の男性が声をかけてきた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名はトレント・リビナー魔法協会長をしています。多分私は愛来様が知りたいことを知っている」
私が知りたいこと……。
この人は何を知っているというの?
ドクドクと血管に血が流れるのを感じる。心臓が嫌な音を立て、指先が緊張のためか冷たくなっていく。
ここで逃げてはいけない気がする。だって「期限は五日」トレントの先ほどの言葉。五日で何かを決めなければいけないのならば急がなくてはならない。
「王様、教えてください。一体何か起こっているんですか?私にも関係があることなんですよね?王様が教えてくれないのであれば、トレントにお聞きしてもよろしいでしょうか?」
目を伏せたガルド王は奥歯を噛みしめると事の次第を話し出した。


