ウィルは愛来が寒くないように毛布を自分の肩と愛来の肩にかけ二人を包み込む。愛来が頬を赤らめながら微笑むとウィルはその頬にそっと触れ真剣な瞳で見つめた。


「愛来俺は王太子だ、今後王からこの国を引き継ぎ民達を守っていく。……愛来にはこの国の妃となり俺の隣に立ってもらいたい。この国を……などと、重たいと思うが……俺は愛来を愛している。必ず愛来を守り幸せにする。婚約を交わし結婚してほしい」

 嬉しい。

 嬉しいけど私にこの国を背負うことが出来るのだろうか?異世界からやって来て、まったりライフ最高などと喜んでいる自分が。


 この国の王妃になるなんて……。

 でも……。

 それでも私はウィルの隣にいたい。

 そう思うけど……。




『根性よ!!』

 生前のお母さんの声が頭に響く。

『愛来根性よ。人間根性でやれば何でもできる。頑張りなさい』

 そうだよね。

 うん。



「……ウィル。私はこの国の人達が好きです。でも……それ以上にウィルのことが大好きなんです。この世界でウィルと一緒に生きたい。この国を……この国の人達を守れるかは分からないけれど……私はあなたを守りたい、幸せにしたい。よろしくお願いいたします」

 ウィルが瞳を細め愛おしそうに愛来を見つめる。

「愛来ありがとう。これを愛来に」

 ウィルが愛来の左手をとると薬指に銀色の輪がはめられる。

 指輪?

 銀色の輪には小さな宝石。

 シンプルなデザイン。

 これは何の宝石かしら?

 翡翠色の宝石はウィルの瞳の色と一緒でとても綺麗。愛来は自分の左手の薬指で輝く指輪をうっとりと見つめた。

「ウィルありがとうございます」

「気に入ったか?もし気に入らないようなら違う物を作らせるぞ」

「ううん。これが良いです。大切にしますね。これは何の石ですか?ウィルの瞳の色と同じでとても綺麗です」


「ああこれは、ヒノサイトと言って魔法を増幅させたり、魔除けの効果がある石なんだ」

「嬉しいです。大好きウィル!!」


 男の人から贈り物をもらったことなど今までない愛来は破顔した。



 破顔したアイラの表情にウィルは息をのんだ。

「可愛すぎる」

 はぃ?

 ウィルが何か呟いたが聞こえない。

 スッと目を逸らしたウィルの耳が赤くなっている。

 あれ?どうしたんだろう?
 
 愛来はウィルの耳にそっと手を伸ばしてみる。

 耳が赤い寒かったのかな?

「……くっ」

 苦しそうに息を止めたウィルはゆっくりと息を吐きだし、平静を装うがキョトン顔の愛来が可愛すぎて悶絶する。

「愛来……」

 ウィルは愛来を抱きしめると右手で顎を上げ唇を重ねた。

「愛来……愛している……愛している」

 チュッチュッとついばむようなキスが続き、悲しくないのに愛来の瞳から涙がこぼれ落ちる。それをウィルがペロリとなめとる。

「涙はしょっぱいかと思っていたが、愛来の涙は甘いのだな」



 ウィルの甘い囁きは続き、大きな四つの月が幸せな二人を照らす。






 この幸せが……

 ずっと続くと思っていたのに……




 二人が引き裂かれる日は






 刻々と近づいていた。