*

 愛来はウィルが来るのをソワソワしながら待っていた。

 どうしよう。

 緊張する。


 リミルがデートとか言うから余計に緊張する。ウィルは部屋で待っているようにとの事だったけど……。


 愛来が部屋の中をグルグルと歩き回っていると、バルコニーの窓が『コンコン』となった。ドキドキしながらバルコニーの窓を開けるとウィルがバルコニーの縁に足をかけ待っていた。黒を基調とした服装はさながら姫を迎えに来たドラキュラや怪盗のようで月明りで金糸の髪が妖艶に光り輝く。

 愛来はボウッとウィルの姿に見惚れていると、ウィル右手を差し出してきた。愛来はその手に自分の手をそっと重ねるとウィルはふっと嬉しそうに笑い愛来を抱き寄せた。

 愛来の心臓がドキドキと早鐘を打つ。

 沈まれ心臓!!

「愛来……美しいな。黒い髪が艶々と輝いて……月の女神も嫉妬するだろう」

 ひゃーー!!

 耳元で囁かないで、吐息が耳に……。

 心臓壊れるよ。

 月の女神が嫉妬?しないしない。

 王子だから許されるであろう言葉。

 他のモブが言ったら鳥肌物の台詞も王子のウィルが言うと様になる。なんと言うことだ……格好良すぎる。自分が本物の姫になったのではと錯覚してしまう。

 ドキドキが止まらない。

 高鳴る胸を必死に押さえていると、ウィルがパチンッと指をならして魔法が発動させる。ウィルと愛来の足下に魔方陣が展開され体がふわりと浮いた。

 愛来はウィルにしがみつき浮遊感に耐えていると、すぐに足下は安定した。

 ここはお城の屋根の上?

 鉛筆のように尖った屋根の他にここだけは平らになっている。そこには絨毯のようなフカフカなシートが敷き詰められ、お茶やケーキなどの甘い物の他にも、サンドイッチなどの軽食までおいてある。

「子供の頃家庭教師から逃げてここでサボって眠ったりしてたんだ。すぐにアロンに見つかって怒られたが」

 子供の頃の二人可愛かっただろうな。

 二人ともやんちゃだったのかな?


「愛来は明日まで休みだと聞いていたから、一緒に月を見ようと思ったんだ。月が四つ出ているのを見たことは無いだろう?」

「はい。確か東西南北に違う色の月が出るんですよね?それにしても大きいお月様ですね」

「……」

 二つ目の月が出終わり優しい輝きを魅せる月達。

「さあ、ここに座って、温かいお茶を飲もう」

 愛来は絨毯に置いてあるクッションの上に腰を下ろすと、ギルがフワフワと飛んできた。まん丸い体に小さな耳と尻尾。丸い毛玉がフワフワ浮いているみたいで見ているだけで可愛い。

 そんなギルの新事実。

「ウィル、この間気づいたのですがギルちゃんに手と足があったんです。ビックリです。今までどこの隠していたのかと……。その……つまらないですね。こんな話……」


「そんなことはない。こうして笑っている愛来を見ているだけで俺は……。元気になって良かった」

 くぅーー……。

 やっ……優しい。

 かっこいい。

 優しい。

 かっこいい。

 愛来は心の中で悶絶を繰り返す。

 好きが止まらない。

 あふれ出すこの気持ちをどうしたら良いか分からない。