愛来はベッドから起き上がろうとしたが、あわてて頭から布団をかぶると布団の隙間から部屋の様子をうかがった。

「愛来!!やはり具合が悪いのか?医者を呼んだ方が良いのではないか?」

 ベッドまでやって来たウィルが心配そうな声を出し、ベッドの脇に座ってしまった。

 ひぇーー。座っちゃったよ。

 大分腫れは引いたと思うが、今朝の自分の顔を思い出すと怖くて布団から出ることは出来ない。

 やだ。

 どうしよう。

「ウィル……。その……私は大丈夫です。まだ仕事が残っているでしょう?仕事に戻って下さい」

「愛来少しで良いから顔を見せてくれ。元気な姿を見たらすぐに出て行く」

「……ホントに私は元気なんですよ」

「……」

 こっそり布団の間からウィルを見ると、悲しそうにこちらを見つめていた。

 ウィル……。

 そんなウィルを顔を見て胸がズキンッと痛む。

「ウィル……ホントにごめんなさい。……その、病気とかではないんです。泣きすぎたせいで、目が腫れてしまって……恥ずかしくて……」

 布団の中でプルプルと震える愛来をウィルは布団ごと抱きしめた。そして安堵の溜め息をついた。

「良かった。愛来に嫌われてしまったと思ったぞ」

「そんなこと絶対に無いです。私はウィルが大好きなんです!!」

 キャーー!!

 私はいったい何言ってるんだろう。

 布団の中が蒸し風呂のように熱くなっていく。

「そうか。俺も愛来が大好きだ」

 うっ……うわっーー。

 やばい。

 やばいよ。

 布団の中からウィルの顔を覘くと、嬉しそうに目元を赤く染めたウィルの顔が近くにあった。

 そんな顔されたら……。

 胸がキュンキュンと高鳴っていく。


「夜になったら布団から出られそうか?出られそうなら、連絡をくれ。夜の散歩へ出かけよう」

「はい……」

 ウィルが部屋から出て行くのを布団の隙間から覘いていると、リミルがいつの間にかベッドの横に立って右手を頬にあて溜め息をついた。

「はぁーー。なんて初々しい。リミルまでキュンキュンしてしまいました」

 きっ……聞かれてた……。

 いやーー!!

 穴があったら入りたい!!

 布団の中は熱が更に急上昇する。


 この後、恥ずかしさで、布団から出られなくなった愛来が、サウナ状態の布団の中で酸欠&脱水になったのは言うまでも無い。