ロドスさんとのお別れを済ませ、愛来はルドーの背中にまたがると、ルドーは軽やかに星空をかけていく。
ふと見上げた空に……愛来は驚愕した。
「うっ、ウィル!!月が二つに増えてる!!」
先ほどまで一つだった月が二つに増えていた。
しかも色が……。
赤い……。
「愛来の世界には月が一つなのか?」
「うん、一つだけですよ。でも今まで月が二つあることに全然気づきませんでした」
「魔獣が出るから夜外に出るのは危険だしな……所で愛来、月は二つでは無いぞ」
「えっ……」
「月は全部で四つだ。東西南北に一つずつ東に白銀の月、西に赤い月、南に青い月、北に緑の月が、十九時頃から一時間おきに一つずつ出てくる。月を見れば方角は分かるし、時間も大体分かるんだ」
冒険者達は月を見て方角を確認するんだとか……。
愛来は赤く輝く月を見つめていると、南に青い月がだ始めていた。三つ目の月が出始めているということは時刻はもうすぐ二十二時頃だと言うことだろうか。
辺りは真っ暗だが全く怖くは無かった。
背中にはウィルのぬくもり。
絶対の安心感。
そっとウィルの顔をのぞき見ると月の明かりに照らされた美しい顔が近くにある。真っ直ぐに前を見つめる瞳は宝石のような翡翠色、全てのパーツが完璧な整った顔立ち。
でも、
それだけでは無い。
私がこの異世界ファーディア・セレスティーにやって来て不安なとき、辛いとき、悲しいとき、いつも側にいてくれたのはウィルだった。
ウィル……。
私はこの人を好きにはなってはいけないと、心に蓋をしたはずだったが、この人が好きだと再確認してしまった。
私はウィルが好き。
この時二人はまだ気づいていなかった。
刻々と忍び寄る不穏の陰に
これからの二人の運命を……。
引き裂かれるこの思いを……。