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 ウィルが政務の仕事をしていると執務室にアロンがやっていた。

「殿下、今朝方ロドス・ウルムが亡くなられたそうです」

 資料に目を通しながら話を聞いていたウィルの肩がピクリと動いた。

「それで……、愛来の様子は?」

「はい。かなり落胆しているご様子で……村の人々と共にロドスの埋葬を手伝っているとのことでした」

「そうか……」


 愛来……泣いているのだろうな。

 すぐに行って抱きしめてやりたいが……。

 王太子が村人の葬儀には出られない。

 一度行ってしまえば、全ての葬儀に出席せねばならなくなる。自分の村にも来て欲しい、この村の葬儀だけ出席し不公平だと言う輩が出てくるからだ。




 はぁーー。

 ウィルは溜め息を付いた。

 愛来の側にいてやりたいのに……。

「殿下どうなさいますか?」

「愛来が帰って来るまでに全ての仕事をかたづける。王の所で止まっている資料類をすぐに持ってきてくれ」

「分かりました」

 アロンは頭を下げると執務室から出て行った。


 ウィルは政務の資料に目を通し仕事に集中していく、愛来が帰って来た時、一番に出迎えられるよう、今日の仕事をものすごい勢いでかたづけていった。











 愛来は何も考える事が出来ずにボーッとしながら馬車に揺られていた。ロドスさんは村の人々に手伝ってもらい埋葬することができた。リドはずっと泣きっぱなしでルノアさんにくっついていて、帰る時に声をかけようと思ったがやめた。

 何て声をかけたらいいか、わからなかったから……。

 リドはもう許してくれないだろう。

 おじいちゃんを治すと言ったのに……嘘つきだね。


 愛来の瞳から涙は流れない。

 涙は枯れてしまったのかしら……。

 愛来は馬車の窓から後ろに流れていく景色をボーッと眺めたいた。