「人には寿命というものがある。いや人だけではなく、この世界に生まれた生物全てに……。それをむやみやたらと伸ばすことは生態系を崩すということだ。それは神であってもしてはならない。治癒魔法や回復魔法はそれを崩す行為だ。愛来わかるか?」

 生態系を崩してはならない…愛来はコクリと頷いた。

 それでも私はロドスさんを助けたかった。



「大丈夫だ。愛来には針があるだろう。それを使ってロドスを助ければ良い。ロドスは自分の寿命を分かっている。愛来はどうしてやりたい?」


 私は……。



「私はロドスさんの残された時間を充実したものにしたいです。少しでも苦痛を和らげることができたら……って思う」

「そうか、明日からやることが決まったな」

 そう言ったウィルの笑顔がまぶしくて、私の胸はキュンキュンと高鳴った。






 *





 それから愛来は毎日リドの家に通うこととなった。さすがにリドの家までの距離を毎日歩くことは大変なため城の馬車を借りることとなったのだが、いつのまにかウィルが豪華ではない馬車を調達してきてくれたため、それに乗って出かけることとなった。

 リドの家に着くと、リドとルノアさんが笑顔で迎えてくれる。

「聖女様おはようございます」

 元気に挨拶をしてくれたのはリドだ。

 続いて挨拶してくれたのはルノアさんだった。

「おはようございます。毎朝ありがとうございます」

 深々と頭を下げるルノアさんと挨拶を交わすとロドスさんのいる部屋へと向かった。

「聖女様おはようございます。お待ちしておりました。」

「お父さんたら聖女様と話をするのが楽しみで、目が覚めると聖女様はまだかって……ふふふ、子供みたいにソワソワしてるんですよ」

「そんな風にまってくれているなんて嬉しいです。では早速始めましょうか」

 ロドスの体に愛来は針を刺していく。

 少しでもこの穏やかな時間が過ごせるよう愛来は願っていた。

 最近は針の成果か、随分顔色も良くなってきたし、食欲も出てきているとルノアさんも言っていた。

 良かった……。

 だから愛来は油断していた……まだ大丈夫だと。



 しかしその日は突然訪れた。