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それから三日後。
魔獣であるガギル・ドラコを怖がっていた城内の人々も、愛来に危害を加えなければ暴れることは無いと分かると安堵の表情を見せた。今では慣れたもので餌を与えようとする人もいる。
しかしギルは食べ物に全くと言って良いほど興味を示さない。
何も食べないギルを心配して愛来は肉や魚、野菜、果物と様々な食べ物をギルの口元に運んでみたが口を開くことは無かった。
このままでは死んでしまうのでは?と思ったのだが、三ヶ月過ぎても特に変わった様子は無かった。
ウィルが言うには魔獣の生態は何も分かっていないらしい。魔獣と人は一緒には暮らせない。これは昔から言われていることで、何を食べているのか雌や雄がいるのかすら分からないと言う。
それでも愛来は何か食べさせたいと、毎日ギルの口に食べ物を運んだ。
そんなある日。
王妃フィーナに誘われ、お茶会へとやって来た。
今日のお茶会は外から人は呼ばないと言うことでホッと胸を撫で下ろしつつ、庭へと向かって行くと、一番にやって来ていたウィルが書類を片手に首をコキコキと左右に動かしていた。
肩……辛いのかな?
凝ってそうだな?
今日あたりまた針を刺してあげたいな。なんて思っていると王様と、王妃様、ラドーナがやって来た。
愛来は両膝を軽く折ると淑女のお辞儀をし、挨拶の言葉を述べた。
「皆様、本日はごきげんうるわ……」
挨拶を言い終わる前にラドーナがそれを止めた。
「よいよい、堅苦しい挨拶などいらんよ。愛来は今日もかわゆいのう」
今日の愛来は薄い水色のドレスに濃い青のレースが幾重にも折り重なったAラインのドレスを着ていた。レースの周りには銀糸で刺繍が施され太陽の光に照らされるとキラキラと光を放った。
それを見たウィルも優しく目を細め愛来の手を取った。
「今日も愛来は可愛らしく、美しい」
そう言って微笑むウィルは太陽の光に金色の髪を輝かせ、神や女神のように美しかった。
私が美しい?この人は何を言っているのかしら?
自分を鏡で見たことが無いの?美しいのは……。
まっ……まぶしい。
ドキドキが止まらないよ。
愛来は思わずウィルに握られていない方の手で目を覆った。それを見たウィルは首を捻りながら愛来を椅子に座らせた。
愛来はドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせるため紅茶を一口の飲み込むのと同時に、王妃フィーナが尋ねてきた。
「ところで二人の関係はどこまで進んでいるの?」
あけすけに話し出したフィーナにウィルと愛来は思わず口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになっていた。
そんな二人の態度に、これは何も進んでいないと確信をもったフィーナ。
全く何をやっているのかしら……この子は。
はぁーー。と溜め息を付いたフィーナは鋭い瞳でウィルを見ると「チッ」と舌打ちをした。
「そんな愚息に育てた覚えはなくってよ。さっさと愛来さんを落としなさい」
聞き捨てならない言葉に愛来はオロオロと目を泳がせた。
「王妃様それはちょっとダメなのではないかと思うのですが……身分とか……」
「何がダメなのですか?あなたはこの国の聖女で魔獣と契約を交わした唯一の人間なのですよ。身分なんて関係ないわよ。ねぇ、あなた」
「そうだぞ愛来殿、私はいつでもウエルカムだ」
それを聞いたラドーナとギルが、御神輿わっしょい、わっしょいのかけ声と同じリズムでウッエルカム、ウッエルカム、ウッエルカム……。っと後ろで小躍りを始めた。
この二人?
一人と一匹はかなり気が合うらしい。


