「さあ、食事を始めよう」

 今日の料理は前菜がチーズとトマトに似た野菜と葉物を混ぜた物だった。口に含むと少し塩気が強く食欲を誘ってくる。次がジャガイモのような芋系のスープ。メインに鴨肉のローストの様な鳥を香草で焼いた物、デザートに酸味の強いベリー系のパイだった。どれもとても美味しくて、緊張しながらもお腹いっぱいたいらげていた。


 食事に舌鼓をうっていると、話を切り出したのはガルド王だった。

「愛来殿、こちらに来てから毎日勉強をしていると聞いたが何の勉強をしているのだ?」

 そう愛来は毎日特にやることも無いため、この国のことについて勉強することにしたのだ。そして知った沢山のこと……。

「はい。この世界がファーディア・セレスティーという世界で大陸が六つあり、その一つがここ、
アルステッド王国だということ。六つの諸国とは同盟を結んでいて、ここ五十年間戦争は起きていない平和な世界だと言うことなどを学びました。後は礼儀作法なども学びました」

「おお愛来は勉強家じゃのー。小さいのに偉い偉い。」

 愛来の隣に座っていたラドーナが愛来の頭をなでながら微笑んだ。

「ほんとに愛来さんは小さいのに偉いわね」

 王妃フィーナまでもが偉いと褒めてくれるが、愛来の心は複雑だった。

「おじいちゃん、王妃様、私は背は小さいですが成人していますし、子供のように褒められると恥ずかしいです」

 そう言って頬を染める愛来の言葉に皆が自分の耳を疑い、言葉を失っていた。

「「「「…………」」」」

 あれ?

 何だろうこの間は……。


 一番に我に返ったのは王妃フィーナだった。

「ちっ、ちょっと待ちなさい。愛来さんの世界では成人は何歳からなの?十歳位から成人とか
?」

「いえいえ、私の世界で成人は二十歳からですよ」

「にっ……二十歳!!」

 王妃が驚きの声を上げた。

「あっ、愛来さんあなた今、何歳なのですか?」

「えっ?私は今二十三歳ですけど?」

「「「「…………」」」」

 何故か皆が固まり愛来の顔を凝視していた。

 何だろう?


 さっきから何度となくあるこの間は……。


 二十三歳という年齢に何かあるのだろうか?

 すると王妃フィーナが悲鳴に似た叫び声を上げた。

「キャーー!!大変なんてことなの!!ウィルあなた知ってたの?」

「……」

 ウィルは食後に飲んでいた紅茶のカップを持ったまま固まっていた。

 そんな我が息子の様子に王妃フィーナは「チッ」っと舌打ちを打った。


 えっ?

 今、王妃様舌打ちしなかった?

 波打つ金色の長い髪に整った顔立ちはウィルにそっくりで、女神様のような赤い唇から舌打ちが……。

 愛来は周りの反応に不安を覚えていく。

「あのー?私が二十三歳だと何かあるんですか?」

 愛来の不安そうな声に今まで固まっていたウィルが即座に反応したが、愛来を見つめる瞳がソワソワと泳いでいた。

「いや……、その……愛来は十三歳ぐらいだと思っていた……」

「……」


 今度は愛来が絶句し動けなくなっていた。


 なっ……。

 十三歳って、中学生ってこと!!

 確かに元の世界でも童顔で大学生に間違われることはあったけど、まさか十三歳なんて……。


 今、思い返してみたら今までのみんなの対応は子供にするような感じだった……と思う。

 落ち込む愛来をよそに、王妃は口角を上げると妖艶に微笑み息子であるウィルと目を合わせると、クイッと顎を上げた。

 それは何かの合図のように。


 ウィルもそれを心得たとばかりに頷いて見せ、フィーナとウィルの反応に王ガルドとラドーナはやれやれと、首を左右に振ったのだった。