「おーい! 冬ちゃんも行かないか? 蓮のうちで勉強しようぜ!」

「えっ、わたし?」



 冬ちゃんが遠くの席であわてている。



「新名、勝手に決めんなよ」

「いいじゃん、どうせなら、大勢のほうがさ」



 そしてもう一度、教室の中で叫んだ。



「永峰ー! お前も来いよ!」

「おいっ!」



 高折くんがあせった顔で、新名くんの服をひっぱる。

 背中を向けていた永峰さんは、全部聞いていたような顔をして振り返る。



「おれは、永峰に話した。蓮がくるみちゃんちで暮らしてるって」



 え、永峰さんに?



「お前なぁ……」

「いいだろ? ていうか、なんで隠す必要があるわけ? なにかやましいことでもあんのか?」

「そんなのねーし」



 新名くんはふっと高折くんに笑いかけ、永峰さんに手を振った。



「永峰! 来いよ!」



 すると永峰さんが立ち上がり、怒った顔で近づいてきた。



「はぁ? 新名、あんたバカなの? わたしがそんなとこ、行けるわけないじゃん!」



 永峰さんはそう言って、横目でわたしの顔を見る。



「いいじゃん。みんなで行こうよ。なっ、なっ?」



 新名くんはいつも以上にハイテンションだ。



「くるみちゃん、いいだろ?」



 新名くんが聞いた。

 わたしは新名くんの前で、黙ってうなずくしかなかった。