「蓮ー!」



 新名くんが大きな声で高折くんを呼んで、こっちに駆け寄ってくる。

 テスト前だったから、その日の授業は午前中で終わりだった。



「今日、お前んち、行ってもいいか?」

「は?」



 荷物を片づけていた高折くんが、新名くんを見て顔をしかめる。



「お前んちで勉強しよう」

「……意味わかんないんだけど」

「ひとりでやるよりふたりでやるほうが、はかどるだろ?」

「おれはひとりのほうがいい」

「まぁ、そう言わずに。なっ? 蓮ちゃん」



 新名くんは友達を誘っている小学生のように、高折くんの肩を抱いて顔をのぞきこんでいる。

 高折くんはふうっと深くため息をついて、新名くんの手を振り払った。



「わかってるだろ。おれ、今、よそんちにいるって。勝手に友達なんか呼べねーよ」

「じゃあ家の人がいいって言ったらいいだろ?」



 そして新名くんは、わたしを見て言った。



「くるみちゃん、今日これから、勉強しに行ってもいい?」



 高折くんが驚いた顔をする。

 わたしはどうしたらいいのかわからなくなる。



「知ってたの? お前」

「ああ、くるみちゃんから聞き出した」



 高折くんがわたしを見る。



「あの……わたし、新名くんと冬ちゃんには話したの」

「……そっか」



 もう一度ため息をついた高折くんの前で、新名くんが大きな声で叫ぶ。