教室に入ると、高折くんは自分の席で机に突っ伏して眠っていた。

 周りはいつものように騒がしく、男の子たちのグループは大きな笑い声を立てていた。



「高折くん……」



 自分の席に座り、小さな声で呼びかけてみる。

 高折くんの茶色い髪が、窓から差し込む朝の光に照らされ、キラキラひかる。



 いつも楽しそうに笑っていて、華やかで、怖いものなんてなんにもないように見えた、わたしとはまったく関わるはずのなかった人。

 それなのにいまは、いつだってわたしの視界の中にいる。

 わたしは高折くんから、目が離せなくなっている。



『わたしは思ったこと言ってるだけじゃん! この子はなんにも言わないじゃん!』



 永峰さんに言われた言葉が、いまごろになってわたしを責める。

 ふと感じた視線に顔を上げると、新名くんがわたしを見ていた。

 わたしはさりげなく目をそらし、授業の準備をはじめた。