「新名くん……」



 わたしは思い切って、新名くんに聞いてみる。



「高折くんと永峰さんって……つきあってるの?」



 新名くんはゆっくりとわたしに視線を向けて、静かな声でつぶやいた。



「つきあってないよ。永峰の片想い」



 どこかでほっとしているわたしがいる。

 新名くんはそんなわたしに笑いかけて言う。



「いま、ほっとしただろ? くるみちゃん」



 あわてて首を横に振ると、新名くんは大きな声で笑いながら言った。



「マジわかりやすいんだもんなー、くるみちゃんって」

「に、新名くんっ」

「気になる?」

「え……」



 新名くんが笑うのをやめて、わたしに聞く。



「蓮のこと、気になる?」



 教室の中から新名くんを呼ぶ声が聞こえる。

 誰もいなくなった廊下の向こうから、先生が歩いてくる。

 なにも言えずにうつむいた。

 そんなわたしの前で、新名くんはまたふっと笑う。



「まぁいいや。じゃあ、またな、くるみちゃん」



 新名くんが教室の中へ入っていく。

 わたしは廊下に突っ立ったまま、熱くなった頬に手を当てた。