翌日は代休で学校は休みだった。

 わたしは部屋の窓を開けて、自分の机の前に座る。

 窓から吹き込む風は、ひんやりとした秋の風だ。

 机の上には、スケッチブックが置いてあった。

 静かにページを開くと、最後の絵が破れている。



「どこに落としちゃったんだろう……」



 半分にちぎれてしまった絵を、なくしてしまった。

 泣きながら走っていたときに、どこかに落としてしまったのかもしれない。



「もうやだ……」



 スケッチブックの上にこつんと頭をのせた。

 ふわりと吹いた風が、カーテンを揺らしている。

 目を閉じると、高折くんの顔が浮かんできた。



 雷の鳴った日に、そばにいてくれた高折くん。

 薄暗くなったベンチで、一緒にバスを待ってくれた高折くん。

 わたしの知っている高折くんは、すごくやさしかった。



『じゃあ、高折くんがくるみにやさしいのはさ』



 冬ちゃんの声が聞こえてくる。



『助けてもらった、恩返しみたいなつもりなのかなぁ……』



 そうだったの? だからわたしにやさしくしてくれていたの?

 お母さんに、この家へ連れられてきたから。

 この家で、面倒をみてもらっているから。

 だからわたしに……



『こういう男だよ? おれは』



 昨日聞いた声を思い出し、胸が苦しくなる。

 そのとき、部屋のドアを叩く音がした。