きみとぼくの終わらない物語

「こんなところで……なにしてるの?」



 わたしは思い出す。

 ひとりで家にいるより、公園で星を見ていた方がいいって言った、高折くんの言葉を。

 高折くんはわたしを見たあと、すっと目をそらしてつぶやく。



「バイト……行ってた」

「うそ」



 わたしはブランコの前に立つ。



「バイトなんか行ってないんでしょ? 今までもずっと、行ってなかったんでしょ?」



 高折くんはなにも答えない。



「どうしてそんな嘘つくの? そんなにうちに帰りたくないの? なんの気兼ねもしなくていいって、お父さんもお母さんもあんなに……」

「なんだ。バレてたのか」



 高折くんがわたしの言葉をさえぎるように、小さく笑った。

 わたしは黙って高折くんの顔を見る。

 高折くんは隣のブランコを指さして「座れば?」と言う。



 わたしはブランコに腰をおろし、スケッチブックを膝の上にのせた。

 右側に座っている高折くんとの距離は、微妙に遠い。



「あんたんちの家族ってさ……」



 そんなわたしの耳に、高折くんの声が聞こえる。



「親戚でもない赤の他人を引き取って、部屋を用意して、毎日ご飯も弁当も作ってくれて……遠慮することないよ、なんでも好きに使っていいよって、みんないい人過ぎるよな」

「なに言って……」



 わたしは隣の高折くんを見る。

 高折くんは前を見たままつぶやく。



「今日、学校でおばさんに会ったよ」

「え……」



 お母さん、来たんだ……あんなに来ないでって言ったのに。



「見つからないようにしてるつもりみたいだったけど、おれが気づいて……声をかけたら『来ちゃってごめんね』って謝りながら、『でも蓮くんが楽しそうにしてるところが見れてよかった』って、半泣きで喜んでるんだ。あんないい人、他にいないよ」



 高折くんは少しだけ笑ってから、続けて言う。



「だけどおれは、あの家にいると息がつまる。おれはそんないい人たちとは正反対の、どうしようもない人間だから」

「そんな……」



 どうしてそんなこと言うの?



 公園の脇の道路でライトが光って、車が一台通り過ぎる。

 救急車のサイレンの音が、かすかに遠く聞こえる。

 高折くんは足で地面を蹴って、キイッとブランコを揺らしはじめた。