きみとぼくの終わらない物語

 いつもだったらバスに乗って帰る道を、わたしはとぼとぼと歩いていた。

 いま何時なのかわからない。でもだいぶ遅い時間だと思う。

 何の連絡もしていないから、お母さんは心配しているかもしれない。



 ぐすっと鼻をすすって、涙をぬぐう。

 夜風が吹いて、汗をかいた体が、ひんやりと冷えていく。

 走り過ぎて痛くなった足を引きずりながら、自分で自分が情けなくなる。



『わたしじゃないからね。矢部さんが引っぱったからだよ』



 そうだ。わたしがムキになって引っ張ったりしなければ、こんなことにはならなかった。

 もう一度目をこすって顔を上げると、家の近くのバス停と、いつも通り抜けている公園が見えた。



 わたしは薄暗い公園の中を歩いた。

 街灯のあかりがぼんやりと遊具を照らしている。

 昼間は賑やかで明るい公園だけど、夜は怖いほど静まり返っていた。



 その中を歩きながら、わたしは一台の自転車が停まっていることに気がついた。

 すぐそばのブランコには、ぼんやりと空を見上げて座っている人の姿。



「あの自転車……」



 よく知っている自転車だ。

 それにあのTシャツは……わたしと同じ。



「高折くん?」



 静かな夜の空気の中、わたしの声が響いた。

 ブランコがかすかに揺れて、座っていた人がゆっくりとこちらを向く



「高折くん……」



 薄暗い街灯のあかりの下、高折くんの顔は今にも消えてしまいそうなほど儚く見えた。