きみとぼくの終わらない物語

「どうして……」



 唇をぎゅっと噛む。あふれそうになる涙をぐっとこらえる。

 わたしは立ち上がると、荷物をまとめて、部室を飛び出した。



「あれ、くるみちゃん?」



 廊下を走っていたら、新名くんの声が聞こえた。



「くるみちゃん! どこ行くんだよ!」



 だけどわたしは立ち止まらずに走る。

 ごめんなさい、新名くん。

 でも泣き出しそうなこんな顔、誰にも見られたくない。



 わたしはスケッチブックを抱きしめて、校舎を飛び出した。

 空はもう暗くなっていて、後夜祭に集まる生徒たちの笑い声が、周りにあふれている。

 だけどそれはどこか遠い、別世界から聞こえてくるような気がした。



 校門を出て、バス停の前も素通りし、ただ走った。

 走っているうちに視界がじんわりとぼやけてきて、後ろの方で花火の上がる音が聞こえた。