そのあとは新名くんと校内を歩いてから、自分のクラスに戻った。

 教室の中はひと気がまばらで、今日の接客は終了したあとだった。

 冬ちゃんを探したけれど、もういなくて、わたしの荷物のところに「先に帰るね~。ごゆっくり」なんて、イラスト入りのメモが置いてあった。



 わたしはふうっと息をはき、冬ちゃんのメモをリュックにしまう。

 新名くんはいつのまにか、教室に残っていた男子の会話に入り込み、おかしそうに笑っている。

 コミュニケーション能力、抜群なんだな。あの人は。



『だってくるみちゃんといると、すっげー楽しいし』



 わたしも、新名くんと一緒にいると楽しかった。

 いつだって新名くんが楽しそうにしているから、こっちまで楽しくなってくるんだ。

 それって、すごいことだと思う。



 新名くんから目をそらし、帰りの支度をする。

 そのとき、窓枠に座って外を見ている、男子生徒の姿が見えた。

 高折くんだ。

 高折くんはめずらしく、みんなとつるまないでひとりでいた。

 どうしたんだろう。



 三階の窓は大きく開いていた。

 少し強い風が吹いて、机の上に置いてあった何枚かの紙が、ふわりと舞って床に落ちる。



「あ……」



 わたしはそれを拾おうとして、しゃがみこんだ。

 そしてふと顔を上げる。

 下を見ている高折くんの体が、窓の外へ吸い込まれるようにゆらりと動いた。