「でもこれでおれは、いろいろ安心したよ」



 新名くんの声に顔を上げる。



「蓮がくるみちゃんちにいるなら、ひとまず安心だし、くるみちゃんが蓮とつきあってないって聞いて、すごく安心した」

「それってどういう……」



 新名くんはにやっと笑ってわたしに言う。



「おれにはまだ、くるみちゃんに告白する権利があるってわけだ」



 告白……わたしにはまったくの無縁だと思っていたそのワードが、突然胸に突き刺さって、パニックになりそうだった。



「あ、ごめん。おれだって、いきなり告るつもりはないよ? 最近までしゃべったこともなかったのに、そんなのキモいだろ?」



 わたしが思わずうなずいてしまったら、新名くんは笑いながら言う。



「でもビビッときたんだよ。おれの直感は間違ってないと思う。だってくるみちゃんといると、すっげー楽しいし。だけどとりあえずは、オトモダチからはじめませんか?」



 青く晴れ渡った空の下。

 遠くから聞こえる陽気な音楽。

 出店から流れてくる鼻をくすぐる匂い。

 目の前に見える新名くんの笑顔。

 そんないつもと違う世界の中、わたしは新名くんの前で、もう一度小さくうなずいていた。