「いや、おれはさ。もしかしてくるみちゃんは、蓮の彼女なのかなって思ってて。だからわざと蓮の前でくるみちゃんの肩抱いて、あいつの反応うかがってみたり、蓮と永峰のこと話して、くるみちゃんの顔色うかがってみたり……冬ちゃんも疑ってたしさ。そんで一緒に暮らしてるなんて言うから、こいつら同棲はじめたのかって思って」

「ち、違います! 彼女でもないし、同棲でもないです!」



 わたしが叫んだら、新名くんがおかしそうに笑った。



「なんだ、そうかぁ。そんじゃ、あいつの食ってた弁当、くるみちゃんのお母さんが作ってたの?」

「あ、うん。そう」



 週に一回だけ、わたしが作ってるけど。



「うまそうに食ってるよ。てか、うまい。おれも肉団子もらったから」



 そうか。よかった。

 肉団子って、わたしが作ったミートボールだよね。

 わたしは新名くんに向かって言う。



「新名くんと高折くんって、本当に仲がいいんだね」

「ああ、おれたち、幼稚園の頃からずっと一緒だから。ちなみに永峰もな」



 そうだったんだ。それは知らなかった。



「ちっちゃい頃のあいつは、すっげーおとなしくてさ。嫌なことがあるとすぐに泣いて、お母さんの陰に隠れてた」



 わたしは高折くんが、うちに遊びに来た日のことを思い出す。



「だけどお父さんが亡くなってからは、お母さんとあんまりうまくいってなかったみたいで。いや、ほんとは感謝とかしてたんだろうけど、親には素直になれないじゃん? 俺たちだって」

「……うん」

「そんなときに、お母さんまで亡くなっちゃって……あいつ耐えられんのかなって、心配してたんだ」



 高折くんは昨日、バス停でわたしに話してくれた。

 いつもミルとふたりで、公園に行っていたこと。

 星を見ていると、お父さんと一緒にいるような気になれたってこと。

 そんな高折くんは、お母さんまで亡くしてしまった。