「なぁ、くるみちゃん」



 クレープもぺろりと食べてしまった新名くんがつぶやく。



「ちょっと真面目な話、していい?」

「え」



 わたしは少し驚いた。

 さっきとは違う真剣な表情で、新名くんがわたしを見ていたから。



「う、うん。いいよ」



 わたしはきちんと座り直して、新名くんを見た。

 そうしないと、失礼な気がしたから。



「あ、いや、そんなあらたまって聞かれても、緊張しちゃうけど」



 新名くんは照れくさそうに黒い髪をぽりぽりかいたあと、わたしにこう言った。



「蓮の……ことなんだけど」



 わたしの胸が、どきんと音を立てる。



「あいつ、夏休みにお母さんを亡くしたんだよね。おれはおばさんのこと知ってたから、葬式にも行かせてもらったけど」



 新名くんはそこまで言ってから、ちらりとわたしの顔を見る。



「くるみちゃんは知ってた? そのこと」



 わたしは素直にうなずく。

 嘘や誤魔化しは、いけない気がした。



「やっぱりな」



 新名くんはつぶやくと、話を続けた。



「でさ、そのあとどうなったのか、ずっと気になってて。あいつ小学生の頃、お父さんも亡くしてるし。知り合いの家で世話になってるとは聞いたんだけど、それ以上のことは、あいつからいっさい話してこない。一緒にやってたバイトも辞めちゃったしさ。おれもなんだか突っ込めなくて」



 ちょっと待って。バイトを辞めた?

 でも高折くんはほとんど毎晩、夜遅くまで帰ってこない。

 新名くんは小さくため息をついてから、わたしの顔を見た。