「あの、この手……」

「え?」

「は、離して」

「あ、悪い! どさくさにまぎれて、ごめん、ごめん!」



 新名くんはわたしから手を離すと、わははっと笑った。

 とにかく明るいんだ、新名くんは。

 わたしはふと、いつも一緒にいる高折くんのことが気になった。



「いいの? 高折くんとまわらなくて」

「あー、いいの、いいの。あいつは今ごろ、永峰とまわってるよ」



 そうか。わたしが心配しなくても、高折くんには永峰さんがいる。



「それに蓮には言っといたから。おれはくるみちゃんとまわるって」

「え……」



 新名くんがわたしの顔をのぞきこむ。

 わたしはさりげなく、そんな新名くんから視線をそむける。

 新名くんはふっと笑ったあと、話題をそらすようにわたしに言った。



「腹減ったなー。なんか食おうか」

「うん」

「くるみちゃんは、なに食いたい?」



 新名くんがキラキラした笑顔で「くるみちゃん」なんて呼ぶから、わたしは頭がくらくらする。

 女の子が新名くんのこと、キャーキャー騒ぐ理由もなんとなくわかる気がした。