翌日の文化祭当日は晴天だった。

 わたしたちの作った看板は、校舎の入り口と教室や廊下に飾られた。



「あの看板のデザインしたの、くるみ先輩なんですよね?」

「すごく素敵です! わたし写真撮っちゃいました!」



 看板のデザインは、美術部の後輩から大好評だった。



「でもね、絵を描いたのは冬ちゃんだし、色を塗ったり組み立てたりしてくれたのは、うちのクラスの男の子たちだよ。だからあれはみんなで作ったものなの」



 そう説明しながらも、やっぱり褒められると嬉しくなってくる。

 後輩たちと別れると、わたしは自分のクラスへ向かった。

 冬ちゃんは美術室でお留守番だ。



 これでも一応美術部員であるわたしたちは、看板以外にも自分の作品を仕上げて、文化祭の期間は美術室に展示してある。

 そのためひとりずつ順番に、部員は美術室で待機することになっているのだ。

 今日の午前中は冬ちゃんの番。わたしは明日。



「あ、矢部さん」



 教室の前に着くと、クラスの女の子が声をかけてきた。



「あの看板、すごくいいね。みんなかわいいって言ってる」



 女の子は教室の入り口に飾ってある看板を指さす。



「あ、ありがとう」



 わたしだけで作ったんじゃないけどな。

 あとで冬ちゃんや高折くんたちにも報告しなくちゃ。

 みんなとお揃いのTシャツを着たわたしは、教室の入り口にある席に座った。

 今日の午前中、わたしはここで食券を配る係になっていた。