きみとぼくの終わらない物語

「なんか……感じ悪いね」



 ぼそっと横から声が聞こえた。冬ちゃんだ。



「わたしたちの前と男の前で、あきらかに態度変えてるでしょ? 永峰さんって」

「うん……でもしょうがないよ。忘れたのはわたしだし」



 冬ちゃんは、あきれたようにため息をつく。

 たしかに永峰さんの態度は、わたしのことを下に見ている感じがありありだけど。



 でもクラスの女子の中で一番の権力を持つ永峰さんと、教室の端っこでひっそり生息している地味で目立たないわたしは、住む世界が違いすぎる。

 同じ「教室」という空間にいたって、普段はほとんど関わり合いがない。

 だからこういう時だけ、わたしがちょっと我慢すれば、毎日はなんとなく平穏に過ぎていく――はずなんだ。



 わたしは肩まで伸びた少しくせのある髪を指先でいじりながら、永峰さんの艶々した長い髪から視線をそむける。



「それより早く部室行こ。漫画読みたい」

「わかったわかった」



 ふたりで立ち上がったとき、また後ろから声が聞こえた。



「あー、財布、家に忘れたかも」

「もうー、しっかりしてよ、蓮。明日、絶対払ってよね?」

「はいはい」



 いい加減な返事をしたあと、高折くんがこっちを向く。

 つい見てしまったわたしと視線がぶつかり、わたしはあわてて目をそらす。



「行こっ、冬ちゃん」

「うん」



 夏休み明けの教室は、一学期と同じはずなのに、何かが少し違っていた。

 絶対関わるはずのなかったあの人が、わたしの視界に無理やり入り込んでくる。

 わたしは冬ちゃんの手を引いて、逃げるように教室を出た。