文化祭の前日、さっきまで校舎のあかりは、ぽつぽつと灯っていたけれど、今見たらだいぶ減っていた。

 わたしたちは部室の電気を消して、四人揃って外へ出る。

 校舎の外は、夜風がひんやりとしていた。

 暗い夜空に、星が瞬いているのが見える。



「冬野さん、家どっち?」



 高折くんが口を開いた。



「わたしは旭ヶ丘」

「え、マジで? おれもおれも」



 新名くんが冬ちゃんの前で自分を指さす。



「は? うそ。新名くんと一緒?」

「中学どこ?」

「わたし、高校入学のときに引っ越してきたから」

「あー、だから知らなかったのかぁ」



 ふたりが並んでしゃべっている。

 わたしはなんとなく高折くんと歩いていた。

 高折くんはまっすぐ前を向いている。



「じゃあ、おれ、チャリだから」



 自転車置き場の前で、高折くんが言った。



「おう、またな」

「新名。冬野さん、送ってけよ」

「は?」

「ちゃんと送ってけ」



 高折くんはそう言うと、わたしのほうは見ないで行ってしまった。



「しょうがねぇ、冬ちゃんと一緒に帰るかぁ」

「べつにわたしは頼んでませんけど」



 冬ちゃんは新名くんにべえっと舌を出してから、わたしに言う。



「くるみ、ひとりで大丈夫? バスある?」

「うん。平気。もうすぐ来る」



 わたしたちは校門の前で別れる。



「じゃあ、また明日」



 冬ちゃんがわたしに手を振って歩き出す。



「矢部ちゃん、気をつけてなー」



 その後ろで新名くんも手を振る。

 わたしは笑顔でふたりに手を振った。